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子宮がん検診の小さな願い

「先生はちゃんと病状を本人にも話してくれるかなあ」「悪いようには考えたくないけれど、がんならがんで仕方ないさ」などと割合冷静に対応し、問題を受け止めようとする姿勢のみえる人には、告知を進めていける可能性が高いものです。 また、「仕事のことや財産分与のこともあるからちゃんと教えてほしい」などという十分な理由があって告知を望む患者さんには、きちんと告知をしたほうがいいでしょう。
さりげなく病人の意向を探り出すところで、医者から一方的に告知を決められてしまうのは困りますが、逆に「告知をどうするか、家族で相談してください」と言われても悩みますよね。 「家族会議を開いたけれど、どうしても意見がまとまらない」という話もよく聞きます。
こんなときは、ああでもない、こうでもないと考えてばかりいるよりも、本人の様子をさりげなくうかがってみるといいでしょう。 たとえば、こんなふうに聞いてみます。
「検査の結果、よくても悪くても、聞きたい?」「病気のこと、どんなふうに思っている?」仮に、「病気が悪いものだとにおわせておきたいけれど、告知まではできない」と思うときには、次のような言い方がいいでしょう。 「もし、悪い病気だっていわれたらどうする?」「私の意志が弱いのかしら、迷いがあるのかしら」と心配される方もいらっしゃいますが、実はそうではなくて、本人が無意識に出している「告知しないで」というシグナルを敏感に感じ取っている可能性が高いのです。
言葉に出さなくても人は無言のサインをたくさん発しています。 私もいろいろな人に告知をしてきましたが、全身から「告知して」という空気が漂っていて、「出会ってまだ一時間しか経っていないのだけれど、本当に告知してしまっていいのかしら」ととても心配しながら、告知せざるを得なくなってしまったこともあります。
逆に、理論的に考えて「この人には告知したほうがうまくいくのでは」とどんなに思っても、告知を拒否している人の前に行くと、どうしても切り出せないということも何度もありました。 おそらく、その人の気迫とか微妙な表情やしぐさの中に、「告知しないで」「告知して」というサインが出ていて、私たちはそれを無意識に感じ取っているのでしょう。

初めて会話を交わした人でさえ、その人の持っている雰囲気にいろいろ感じるものがあるのですから、長年一緒に過ごしてきた家族や親しい方なら、本人が言葉以外で発している思いを直感的により正確に判断しているに違いありません。 告知に際しては、「どうしても話を切り出せない」、もしくは「切り出さざるを得ない」という状況やあなた自身の素直な直感を大切にしてみてください。
告知するしないで、ご家族の間で意見が食い違うこともよくあることです。 私がかつて担当した患者さんに、Kさんという六○代の女性がいました。
病名は乳がんです。 Kさんのご主人は、「希望を失わせることになるし、今まで築いてきた夫婦の関係が壊れてしまわないだろうか」と告知には反対。
娘さんは、「お母さんはしっかりした人だから、告知を受けてもきっと大丈夫。 知らされないことで心残りがあったら、そっちのほうがかわいそう」と告知を希望していました。
ご主人と娘さんの話を聞いた私は、どちらの言い分にも一理あると考えて、こうアドバイスしました。 「お父さんは真実を聞かされていないことにしておいて、娘さんからこっそりと病名を話してみたら」「でも、お医者さんはそんなことはいっていない」と病気を否定できます。
さらに、お母さんには娘さんから、「お母さんの病名、お父さんには秘密にしてあるの」と言っておけば、Kさんご夫婦の間はこれまで通り、「病名は知らない」という前提の会話が続けられます。 これならば、夫婦の今の関係を崩すことなく、娘さんも納得できる告知ができるでしょう。
結局、Kさんの場合、娘さんが病気のことを切り出すと、お母さんは「別に、何も心配していないから、病気のことは聞かなくていい」とおっしゃられて、告知できませんでしたが。 家族の意見が割れている場合、みんながひとつの方向にまとまらなければならないという決まりはありません。

家族それぞれに考え方やとる方法は違っても、心の底にある「患者さんを大切に思う気持ち」に変わりはないのです。 知恵を出し合って、上手に折り合っていける妥協案が見つけられることを祈っています。
体に起こっている状況を正直に話すことから「本人は、病名や病状を知りたそう。 でも、がんと言ってしまって、取り返しのつかないことになったら困るし。
それに、先生は、告知には反対している。 家族だけで、どうやって告知をしよう」そんな窮地に追い込まれることもあるかと思います。
そんなとき、実際には、どんなふうに告知を行なったらいいでしょうか?最初にも申し上げましたが、「告知」で大切なことは、「がん」という病名を話すことではありません。 ですから、まずは、「告知」という言葉を忘れて、「今の状況を、より納得して気持ちよく過ごしてもらうために、〈病気〉についてどんなふうに説明してあげたら、楽になるだろうか」と考えながら、患者さんと向き合ってください。
そして、最初は病名を言わずに、体に起こっている状況を正直に話すことからはじめてみましょう。 たとえば、「胃がんにかかって、肝臓にも転移があり、治療が不可能だ」と言われた場合、こんなふうに話してみます。
「どうやら、胃と腸のつなぎ目に、膝をすりむいたときのようなひどい〈ただれ〉ができているらしい。 それも長年かかってできたものらしいから、ところどころひどいコブのようになっているらしいよ。
その〈ただれ〉のせいで胃の出口が狭くなっているから、消化した食べ物が腸に流れなくて、胃が痛んだり、吐いたり、食欲が出なかったりするんだって。 しかも、肝臓のほうも、ひどく炎症を起こして弱っているらしいの。
だから、手術もできなくて、薬で治すしかないんだって。 年も年だし、体が随分弱っているから、治すのに時間がかかるって」「がん」についてのこうした説明の仕方は、「やわらかい告知」と呼ばれています。
ご年配の方や、あまり病気のことを詳しく聞きたくない方であれば、このくらいの話で十分納得されるはずです。 また、こうした話を聞くと、多くの人は、「もしかしたら、悪い病気かもしれない」とまず考えます。
ところが不思議なことに、告知されたくない人は、こう説明されると、「こわい話は聞きたくないから、もうそれ以上話さないで」などと、話をそらす方向に持っていくことが多いのです。 なぜなら、がんといわれるのがこわいために防衛反応が働くからです。

こうした場合には、告知をしないほうが賢明です「そう。 ただれと、肝臓の炎症でよかった。
がんといわれたらどうしようかと思っていた」「がんと告げてないと、ゆくゆく病気が進んだときに、ごまかせなくなるのでは」との心配は無用です。 「がん」という病名を告げていなくても、体に起こっていることだけは嘘偽りなく話してあれば、病状が進んだとしても、家族は嘘をつかずにすみます。
病状が進んだときには、「前にも話をしたけど、胃のただれがさらにひどくなったみたい。 肝臓の働きが、すごく悪くなっているみたい。
年だから治りが悪いのかもね」と話していけばよいのです。

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